【目次】
◎土田酒造(つちだしゅぞう)のこと
◎シン・ツチダにごり生について
◎今回のお酒を造るに至った経緯①
◎今回のお酒を造るに至った経緯②
◎今回のお酒を造るに至った経緯③
◎クラフトサケに思うこと
◎特別酒「KIMOTO HOP NIGORI NAMA」
土田酒造(つちだしゅぞう)のこと
土田酒造は、群馬県は川場村という人口3,400人の小さな村に拠点を構える酒蔵です。 創業は1907年、現在の当主 土田祐士さんが6代目で、地元の方々からは誉国光(ほまれこっこう)という地酒の名で親しまれています。
つけたろうの大好きな蔵のひとつです。
お酒の味や、蔵のみなさんの魅力はもちろん、蔵の姿勢にもすごくグッときます。 ぜひ、酒蔵のHPの言葉をご覧いただきたいと思います。 (お酒造りに詳しくない方でもわかるように表現されています)
<HPからの引用>
酒造りの哲学
私たちは、菌や微生物の力、そして先代たちの技術を信じています。 だからこそ、全量を生酛(きもと)仕込みで、余分なものを加えず 目に見えないものを導き促し続ける酒造りにいきつきました。 造り手である私たち自身が、まず楽しんで造ること。 米のうま味を引き出し、日本酒の多様性や複雑な味わいを楽しんでもらいたい。 飲み手、造り手、すべての人に、いい時間を。 私たちは醸造技術や日本酒文化を次世代へと継ぐべく、日々挑戦を続けています。
技術と手法
私たちの醸す日本酒はすべて、 米、水、麹という3つの材料と菌のみで造ります。 蔵にすみついている乳酸菌や色々な微生物の活動を導き促す生酛(きもと)造り。 この江戸時代の製法を、現代的な機械設備の中で貫いています。 偶発性を大切に、菌の力を引き出す技術を培い、日々発見や検証を繰り返す。 味の違いや複雑さが楽しめる造り方である一方、菌という物言わぬ生き物が相手ゆえの常に失敗とは隣合せの製法です。 それでも、 「米の味や複雑味を引き出すべく、低精米且つ食用米で酒を造る」 「味のバリエーションをもつ」 「どんな米でもうまい酒にする」 そんな信念を持って、個性豊かな酒を醸しています。
米と精米歩合
米は酒米ではなく食用米(食べるお米)を使用し、できるだけ削らず(磨かず)日本酒にしています。委託製造により他県のお米のご依頼があるとき以外は、群馬県産です。発注は、「群馬県産米、3等以上、60%、品種指定なし」。情熱をもって米作りに取り組む地元農家のお米を、どんな米でもうまい酒にしていきたいという思いをもって日々技術を磨いています。また、ここ数年は、極力、米を削らないことにもこだわっています。目的は米のうまみをまるごと日本酒にすること。そして、原料を使いきること。かつての造り方では、精米に1日以上を要していたため、エネルギー削減にもつながるのです。私たちは、今後も食べるお米を食べる時と同程度にしか削らずにうまい酒を造ることを追求していきます。
シン・ツチダにごり生について
今回の特別酒のベースとなったにごり酒は、つけたろう酒店とも縁深いお酒なんです。
2021年6月に特別酒#8でお届けした「つけにごり(土田 研究醸造11 特濃ver.)」が、そのきっかけとなりました。
このお酒はつけたろう酒店史上、もっとも物議を醸した1本です。 というのも、冷蔵しても発酵が止まらず、酒蔵の冷蔵庫内で数本の酒瓶の栓が吹き飛び、中のお酒が噴水のように天井まで噴き出して大変なことになりました。
そのため、すべてタンクに戻して再瓶詰めして出荷しましたが、抜栓時にお酒が噴き出したり、冷蔵庫内で横に保管すると暴発することに。
つけたろう、酒蔵ともに大きな反省と気づきを得た特別酒でした。あれは本当に大変だったし、会員のみなさま、土田酒造のみなさま、多くの方々にご迷惑をおかけしました。
しかし、土田酒造はこの経験を活かし、翌年以降もにごり酒を仕込み、2024年現在では安定して毎年この季節(6月頃)に発売されています。※今はもう噴き出すことはないので安心してお飲みください(笑)
今回のお酒を造るに至った経緯①
土田酒造の敷地内にVENTINOVEというイタリアンの名店があります。
2023年にVENTINOVEのシェフ、土田酒造の星野杜氏、つけたろうでペアリングイベントをしました。
その際、お客様のなかに土田酒造と同じ群馬県でクラフトビールを造るオクトワンブルーイングの社長さんが参加してくださっていました。イ
ベントの終わり、みんなでお話している時に、「土田酒造のお酒に、オクトワンブルーイングが栽培するホップをいれた、クラフトホップサケを造ってみよう!」という流れになりました。それがこのお酒を造るきっかけでした。
以降、星野杜氏はホップの収穫なども手伝いに行き、日本酒とクラフトビールが融合した新しいお酒の準備をしていきました。
今回のお酒を造るに至った経緯②
なぜ、今回は定期コースの会員のみではなく、一般の販売も行うのか?という部分もお伝えしなければなりません。
これはつけたろう酒店を続ける想いと関係しています。
つけたろう酒店は「まだ世にない日本酒の感動体験を届ける酒屋」を目指しています。日本酒の多様化に少しでも貢献できるよう、人気のお酒だけでなく様々な酒を楽しんでもらえるよう、微力ながら約4年間がんばってきました。
その中で感じてきたのは「新しいお酒を生み出せている、けど、まだまだ一部の人にしか届けられていない」という手ごたえと反省の入り混じった気持ちでした。
このお手紙を読んでくださっている特別酒の定期コースをお申し込みいただいているみなさまには、感謝してもしきれないくらいです。みなさまのおかげで、通算30本以上もの新しいお酒を生み出す挑戦ができました。本当にありがとうございます。
でも、そろそろ次のステージを目指さなければならない、と腹をくくりました。普段、日本酒に馴染みのない人にも「こんなお酒があるんだ!」という感動体験を届けられるようにしようと。
今回のお酒を造るに至った経緯③
そんな折、つけたろう酒店のペアリングレシピを担当してくれている井上豪希さんと、稲とアガベ醸造所の岡住修兵さんからアドバイスをいただきました。(僕がいないときに2人で真剣につけたろう酒店の経営について議論をしてくれたようです笑)
それは「タンク1本つくってみたら(≒1度にたくさん造ってみたら)?」という提案でした。
つけたろう酒店をはじめた時は酒屋の経験もなく、売れるかどうかもわからず、はじめは手探りのなかで120本のスタートでした。そのため1000本や2000本などの挑戦にはとても踏み切れなかったんです。というか、そんな考えにまったく及んでいませんでした。
しかし、4年弱継続してきたつけたろう酒店であれば、今ならイメージができる。そして、たくさん造ることで今まで届けられなかった方々にも手に取ってもらうことができる。それは、日本酒の多様性にも大きくつながる。やるしかない。やろう、と。
クラフトサケに思うこと
昨今の日本酒業界には「クラフトサケ(クラフトサケブルワリー協会の定義)」という新しいジャンルのお酒が誕生してきています。
クラフトサケを簡単に説明すると「副原料を添加した日本酒」で、僕はこのクラフトサケにすごく未来を感じています。
日本酒を造るには清酒醸造免許が必要で、新規の免許発行が行われていないため、日本酒業界は新たに新規参入することがほとんどできない業界なんです。それでも自分の日本酒を造りたいと願う若者たちから生まれたのがクラフトサケです。今、このクラフトサケが密かなムーブメントになりつつあります。
日本酒は米・米こうじ・水だけというシンプルな原料を、難易度の高い複雑な技術を用いることで、味わいに幅や奥行きが生まれます。
僕が日本酒にハマったのが、今から20年前。それから、日本酒はどんどん美味しくなっています。それと同時に「似たような日本酒」が増えてきているのも事実です。
醸造技術がオープンになり、設備や流通がどんどん進化する反面、当たり前なのですが「人気が出る美味しさ」も共有され、味わいが画一化しやすくなります。
そこで登場したのがクラフトサケです。
日本酒に副原料を加えることで、従来では表現しえなかった新しい味わいが生まれるんです。
例えば、日本酒の発酵途中にぶどう果汁を加えれば、ワインと日本酒が融合したような味わいに。りんご果汁を加えればシードル、ハーブやスパイスを加えればジンというように、日本酒のジャンルを超えた味わいが表現できます。
長い歴史の中で、日本人が研鑽を積んできた日本酒の醸造技術に、米以外の副原料を添加することで生まれたクラフトサケ。クラフトサケは、間違いなく日本酒の味わいを拡張し、日本の酒文化の発展につながると確信しています。
特別酒「KIMOTO HOP NIGORI NAMA」
そして、今回の特別酒であるホップにごり生。
ついに「日本酒の酒蔵」が「クラフトサケ」をリリースするんです。 これはとんでもなく大きな出来事なので、ちょっと説明させてもらいますね。
これまでは日本酒を造りたくても、新規参入できなかった人から生まれたクラフトサケですが、日本酒を造れる酒蔵によるクラフトサケづくりがついにはじまったわけです。
「日本酒の酒蔵」が「クラフトサケ」を造ることで、どんなことが起こるのか。
これまでは、日本酒は日本酒、クラフトサケはクラフトサケといった境界がありました。しかし、酒蔵がクラフトサケを造ることで、いわゆる清酒と呼ばれる日本酒とクラフトサケのあいだに無限のグラデーションが生まれ、より多様なお酒が生まれる時代に突入したのです。
もともと高い醸造技術を持っている酒蔵が、自由なクラフトサケを造ったら…!?僕はその未来にワクワクが止まりません。
そんな時代の転換点になるかもしれないお酒が、今回のつけたろう酒店と土田酒造さんがコラボした「TSUCHIDA × TSUKE KIMOTO HOP NIGORI NAMA」です。
このお酒をきっかけに日本酒・クラフトサケともに今までにない味覚体験が生み出されていくことを、ひとりの飲み手として切に願っています。
そして、自分でもその想いを形にするべく、個人商店の小さな酒屋ですが、1800本のお酒を造りました。つけたろう酒店の進退をかけたお酒です。
このお酒を飲んだ方に、クラフトサケの可能性を感じてもらえる1本になっているはずです!日本酒のこれからのワクワクする未来を願って、
さあカンパイしましょう!!
▼このお酒を飲んでみる
TSUCHIDA × TSUKE KIMOTO HOP NIGORI NAMA
https://tsuketaro.stores.jp/items/665581d477cfb70ac8bbe2bf